瞻望

上田敏

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怕るゝか死を。――喉塞ぎ、  おもわに狹霧、 深雪降り、木枯荒れて、著るくなりぬ、  すゑの近さも。 夜の稜威暴風の襲來、恐ろしき  敵の屯に、 現身の「大畏怖」立てり。しかすがに  猛き人は行かざらめやも。 それ、旅は果て、峯は盡きて、  障礙は破れぬ、 唯、すゑの譽の酬えむとせば、  なほひと戰。 戰は日ごろの好、いざゝらば、  終の晴の勝負せむ。 なまじひに眼ふたぎて、赦るされて、  這ひ行くは憂し、 否、殘なく味ひて、かれも人なる  いにしへの猛者たちのやう、 矢表に立ち樂世の寒冷、苦痛、暗黒の  貢のあまり捧げてむ。 そも勇者には、忽然と禍福に轉ずべく  闇は終らむ。 四大のあらび、忌々しかる羅刹の怒號、  ほそりゆき、雜りけち 變化して苦も樂とならむとやすらむ。  そのとき光明、その時御胸、 あはれ、心の心とや、抱きしめてむ。  そのほかは神のまにまに。

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