無題(『貧しき信徒』収録・同題第6篇)

八木重吉

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夢の中の自分の顔と言うものを始めて見た 発熱がいく日もつづいた夜 私はキリストを念じてねむった 一つの顔があらわれた それはもちろん 現在の私の顔でもなく 幼ない時の自分の顔でもなく いつも心にえがいている 最も気高い天使の顔でもなかった それよりももっとすぐれた顔であった その顔が自分の顔であるということはおのずから分った 顔のまわりは金色をおびた暗黒であった 翌朝眼がさめたとき 別段熱は下っていなかった しかし不思議に私の心は平らかだった

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