愛国者

与謝野晶子

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小田原より東京へ むし暑き日の二時間、 我れは二人の愛国者と乗合せぬ、 二人は論じ且つ論ず。 その対象となる固有名詞は すべて大臣大将なれど、 その末に敬称を附せざるは 二人の自負のより高きが為めならん。 満員の列車、 避くべき席も無し。 我れは久しく斯かる英雄に遇はず、 されば謹みて猶聴きぬ。 日米のこと、日露のこと 政党弾圧のこと、 首相を要せず、外務大臣を要せず、 天下は二人ありて決するが如し。 大船駅停車の二分に 我れは今日の夕刊を買ひぬ。 新聞には「昭和九年」とあれど、 我れの前の二人は明治型の国士なり。 新聞を開きて、我れは現代に返る。 一面の隅に如是閑先生の文章あり。 偶然にも取上げたる新聞は 英雄たちと我れの間に幕となりぬ。

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