母の歌

与謝野晶子

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ふたおやの愛の心は 等しくて差別なけれど、 その愛の姿のうへに おのづから母ぞ異る。 女にて母とならずば 如何ばかり淋しからまし。 女なる身の幸ひは 母となり初めて知りぬ。 生むことは聖なるわざぞ、 母ひとり之をなすのみ。 神の子と云はるる人も 母の血を浴びて生れき。 男らは軍に出でて 人斬りし道なき世にも、 をさな児に乳房を与へ、 かき抱き歌ひしは母。 母なくば人は絶えけん、 母ありて、人の生命は つぎつぎに新たになりぬ、 美くしくやさしくなりぬ。 今の世も男ごころは おしなべて荒く硬かり。 正しきに導くものは 母ならで誰か能くせん。 願はくは母の名に由り、 地の上の人を浄めん、 富む者の欲を制せん、 戦ひを全くとどめん。

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