屋上

与謝野晶子

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武蔵野の中、 日の入りて後 屋上の台に昇る。 わが座は今 わが庭の 最も高き梢と並ぶ。 風、かの白き天の川より降るか、 我れを斜めに吹きて 余勢、なほ四方の木を揺る。 わが町の木と屋根と皆黒し、 唯だ疎らに黄なるは 街灯の点のみ。 一台のトラツク遠きに黙し、 誰が家のラヂオか、 濁みごゑの講演起る。 東の方、遥なる丘の上に、 うす桃色の靄長く引けるは、 東京の明かりならん。 我れ独り屋上の暗きに坐る。 燦爛たる星、 満身には風。 つくづくと天の濶きを見上げて、 つつましき心に、この時、 感謝の涙流る。

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