皷いだけば

与謝野晶子

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皷いだけば、うらわかき 姉のこゑこそうかびくれ、 袿かづけば、華やぎし 姉のおもこそにほひくれ、 桜がなかに簾して 宇治の河見るたかどのに、 姉とやどれる春の夜の まばゆかりしを忘れめや、 もとより君は、ことばらに うまれ給へば、十四まで、 父のなさけを身に知らず、 家に帰れる五つとせも わが家ながら心おき、 さては穂に出ぬ初恋や したに焦るる胸秘めて おもはぬかたの人に添ひ、 泣く音をだにも憚れば あえかの人はほほゑみて うらはかなげにものいひぬ、 あゝさは夢か、短命の 二十八にてみまかりし 姉をしのべば、更にまた そのすくせこそ泣かれぬれ。

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