第二回の講座、開催報告

8月20日、荻窪にて講座「戦後スタンダード詩を読む」の第二回が行われましました。今回の範囲は戦後名詩選3の丸山薫「北の春から」から、原民喜「碑銘」までの6遍です。参加者の投票から詳しく扱う詩に選ばれたのは扱った詩は金子光晴「富士」、三好豊一郎「囚人」です。講師の西原先生よりコメントをいただきました。

西原先生より

連続講座第2回の8月20日は、金子光晴「冨士」と三好豊一郎「囚人」の2篇の詩を、4名の受講生と一緒に読み、議論しました。

金子光晴は詩「冨士」で、息子を徴兵しようとする国を嫌悪し、日本の象徴富士山を罵倒しています。しかし、研究が進むにつれ、息子の徴兵逃れを成功させたこの「反戦」詩人が、大東亜戦争のプロパガンダ作品を気軽に執筆していたことも明らかになっています。要は言行不一致なのですが、恥じることなきエゴイズムは徹底しています。利己主義をここまで堂々と実行できた金子光晴は、ある意味ですごいのかも知れません。

三好豊一郎「囚人」は難解な詩です。しかし、子供の頃に父親から受けた虐待の恐怖と不安を描いた作品と考えれば、すんなり理解できます。この過酷な体験を直視してリアルに表現するのは辛いことだったのでしょう。三好豊一郎は幼少期のトラウマを、暗喩だらけの曖昧な言葉で包み込んで、抽象的に描きました。隠しながら表現する。そんな戦略を取らざるを得なかった苦しさも感じられました。詩を材料にして様々な感想を述べあう楽しさを、改めて感じた次第です。


「富士」については、利己的に生きることができるか?という問いから、正義とは何かという話題から、昨今のLGBTQや差別について話題が広がりました。
「囚人」については、何故詩を難解に書くのか?という論点に対し、西原先生のお考えも含めて5つほどの仮説が上がりました。「現代詩」とは何かを考える上で非常に実りある議論をすることができました。

このように書くと難しそうな話をしていますが、先生がわかりやすく解説をしてくださるため、初学者でも安心して詩と向き合うことができます。次回は9月3日(日)15時〜の開催です。お申し込みは以下のページよりお待ちしております。

https://poetryfactory-standard.peatix.com/

また、今回講座では扱いきれませんでしたが、原 民喜「碑銘」の朗読シーンです。

遠き日の石に刻み
砂に影おち
崩れ墜つ 天地のまなか
一輪の花の幻

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