夏の面影
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夢
韓紅の花ごろも
燃ゆる思とたきこめし
蘭麝の名殘匂はせて
野薔薇散り浮くいさゝ川
流の水は淺くとも
深し岸邊の岩がねに
結ぶをとめの夏の夢。
よその高峯の夕霞
何にまがへてたどりけん
羅綾のしとね引換へて
今は緑の苔むしろ
水とこしへに流去り
花いつしかと散りぬれば
夢か昨日の春の世も。
のぼる朝日に照りそひて
色なき露も色にほふ
眺めまばゆきあさぼらけ
若葉のみどり夏深き
梢はなるゝもゝ鳥は
我世たのしと鳴くものを
さめずやあはれをとめごよ。
鳴くや杜鵑のひと聲に
五月雨いつかはれ行けば
ちぎれ/\の雲間より
やがてほのめく夏の月
銀輪露に洗はれて
我世すゞしとてるものを
さめずや哀れをとめごよ。
螢飛びかふ夕まぐれ
すゞ風そよぐ夜半の空
流れ流るゝ谷川の
水の響はたえねども
水の行くへは替れども
覺めずやあはれなが胸に
燃ゆる思の夏の夢。
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