土井晩翠

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紫にほふ横雲の 露や染めけむ花すみれ 花に戯るゝ蜂蝶の 戀か恨かうつゝ世の はかなき春をよそにして  大空のぼる鷲一羽  あらしは寒し道さびし。 春の姿はたへなれど 花の薫りはにほへれど 其春よりも美はしく 其花よりもかんばしき 雲井のをちをめざしつゝ  大空高く鷲一羽  あらしはきびし道かたし。 背には無限の天を負ひ 緑雲はねにつんざきて 飛び行くはてはいづくぞや 望のあした持ち來る 高き薫りのあとゝめて  大空めぐる鷲一羽  あらしはつらし道すごし。 嗚呼コーカサス峯高く 千重の叢雲むらだちて 下界のひゞきやむところ 天上の火を奪ひ來し 彼のたぐひか青ぐもの  大空翔くる鷲一羽  あらしははげし道遠し。

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