「暗」と「眠」

土井晩翠

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夕暮迷ふ蝙蝠の 羽音にそよぐ川柳 其みだれ髮わがねつゝ 「暗」と「眠」とつれだちて 梢しづかに下だりけり。 墨ぞめごろも裾長く 「暗」の歩みに音もなし、 ふり蒔く露は見えねども 「眠」の影のさすところ 人のまぶたは重かりき。 過ぐるを憶ふ悲みに 來ん日を計るわづらひに ひと日のわざは足るものを 「暗」よ「眠」よたづね來て 休みを賜へ人の子に。 嗚呼罪あるも罪なきも 喜ぶものも泣くものも 現の夢を逃れ來て 「暗」のころもを纏へかし 「眠」の露に浸れかし。 星宵の空に聲もなく よさしは今と佇ずめる 「暗」と「眠」の影ふたつ あまねき惠み人の世に たるゝいましのなつかしや。

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