智慧の實を食べてより(七月二十四日)

福士幸次郎

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栗の樹の下を歩けば ふかい落葉の中に 君の吐息たち わたしの吐息たち 何處で鳴くともしれぬ山鳩の聲は 梢に唯だ一つ殘る黒い葉のやうにふるへる もの寂しく遠吠えする果樹園の番犬 突然鋭く發射する連發銃の反響 遠い山脈からは雲一つうごかず 遠いあさぎ色の麥畑のそよぎまでも 日は悲しげにしんと照らしてゐる 此の時堪へきれないやうに君の暗い影は 空とぶ鴉のやうに私の胸へ落ちた 手錠のやうに箍のやうに おもく呼吸ぐるしく私の胸を抱きしめた ああまたしても私等は悔いるのか あの遠吠をする犬のやうに 罪と苛責に吠えるのか うらがれ時の果樹園に しらじらしくもふるへる白い日の光 その薄寒い木立の奧に 犬は悲しげに吠えてゐる

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