日の子(十二月十二日)
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Ⅰ
僕はこれが美しいと一生言へぬかもしれない
愛するものも愛すると言へなくて仕舞ふかもしれない
有難いといふことも有難いと言へなくて仕舞ふかもしれない
それで僕の一生が終るかもしれない
Ⅱ
ああしかし見えた、見えた
空中のうつくしい光が
あれあれ誕生だ、産聲だ
石も動く
木も物いふ
死顏した月に紅がさして
日になる日になる
目をくりくりさせる
鳥がさへづる
木がものいふ
闇をふき消す
世が新たになる
Ⅲ
あれあれ
光がふえてゆく、力が増してゆく
ふらふら昇つて
落ちさうで落ちない
日は空中を昇つてゆく
だんだん呼吸をはずまして
勢ひ込んで昇つてゆく
Ⅳ
ああこの中に吾が愛子よ
ああこの中に吾が愛子よ
お前はまじまじ何を見てゐる
お前はおどおど何を怖がつてゐる
自然はいつでもいちやついてゐる
自然はいつでもとりとめなく生きてゆく
けれども其處にまことの彼があるのだ
それに逆つて泣いててはいけない
泣顏あらはに進んでゆけ
泣きの涙でもよい進んでゆけ
恐怖を歡喜にかへて胸ををどらせろ
深く深く自然を愛しながら進め
ますます勇氣を振ひ起して進め
お前は日の子だ
冬が來ても決していぢけない
科學もいいもので文明もいいものだ
自然はいつでも宏量で
いつでも機嫌よくわけてくれる
自然は人間を可愛がつてゐる
わけ隔てなく誰へも彼れへもわけてくれる
決して自然を僕等が征服するの何のと大きな口をきくな
そんなことをいふから人間は墮落する
自分で自分の舌を噛んでゐる
永い事、永いこと怖い夢を見て暮らしてゐる
悲しくつらい所をたどつてゐる
Ⅴ
私の愛子よ
日の子の一人よ
人間は皆墮落して
闇い嘆きの根を地におろしてゐる
またそれだけ枝葉を高く茂らしてゐる
しみじみとまがりくねつて生きてゐる
恐しい夢にうなされながら
地獄の鐘をたたいてゐる
Ⅵ
それだけ闇を吹消す愛がいるのだ
それだけ愛の清水が涌かねばならない
闇の業火を淨めなければならない
はやく出れば出る程よく
はやく迸れば迸る程よい
強く光つていやな光を吹消すのだ
お前の力でお前の生命から
強く烈しい白光を放すのだ
Ⅶ
それがライフの力だ
お前の愛の力だ
どこまで行つても果しなく光れ
世界は決して闇くない
ただ人々の光が足りないのだ
お前は日の子だ
自然兒だ
また文明兒だ
自然が血をわけて育てたいとし子だ
かくし子だ
自然を愛するものに
自然はどこまでも力をくれる
味つても味ひきれない程
深い生命をくれる
まことの力を感じ
まことの涙をながし
まことの底に突き當り
まことの生命に生きろ
そのほかお前に何も言ふことはない
沈默だ
太陽崇拜
來るべき詩人よ、來るべき雄辯者よ
ワルト・ホイツトマン
大正二年作
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