鍛冶屋のぽかんさん(七月)

福士幸次郎

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梨の花が眞白に咲いたのに 今日もまた降る雪交りの雨 濁り水は早口に鍛冶屋の樋へをどり込み 眞裸な柳は手放しで青い若葉をぬらしてゐる 此處の息子はぽかんさん とんてんかんと泣く相鎚に 莓の初熟が喰べたいと 鐵碪臺を叩くとさ 手をあつあつとほてらして叩くとさ ああ、夢ならばさめておくれ ぽかんさん 此の世の中に多いものは 祕藏息子のやもめ暮らし 時計の針の尖のやうに 氣の狂れやすい生娘暮らし この年月の寒暑の往來に 私の胸は凋んだ花の皺ばかり 私の胸はとりとまりない時候はづれな食氣ばかり

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