黒い蝙蝠

萩原朔太郎

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わたしの憂鬱は羽ばたきながら ひらひらと部屋中を飛んでゐるのです。 ああなんといふ幻覺だらう とりとめもない怠惰な日和が さびしい涙をながしてゐる。 もう追憶の船は港をさり やさしい戀人の捲毛もさらさらに乾いてしまつた 草場に昆蟲のひげはふるへて 季節は亡靈のやうにほの白くすぎてゆくのです。 ああ私はなにも見ない。 せめては片戀の娘たちよ おぼろにかすむ墓場の空から 夕風のやさしい歌をうたつておくれ。

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