浪と無明
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無明は浪のやうなものだ。生活の物寂しい海の面で、寄せてはくだけくだけてはまたうち寄せ來る。ああまた引き去り高まり來る情慾の浪、意志の浪、邪念の浪。何といふこともない暗愁の浪、浪、浪、浪、浪。げにこの寂しい眺望こそは、曇天の暗い海の面で、いつも憂鬱に單調な響を繰りかへす。されば此所の海邊を過ぎて、かの遠く行く砂丘の足跡を踏み行かうよ。佛陀の寂しい時計に映る、自然の、海洋の、永遠の時間を思惟しようよ。いま暮色ある海の面に、寄せてはくだけ、くだけてはまた寄せ來る、無明のほの白い浪を眺める。もの皆悲しく、憂ひにくづるる濱邊の心ら。
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