農夫

萩原朔太郎

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海牛のやうな農夫よ 田舍の家根には草が生え、夕餉の烟ほの白く空にただよふ。 耕作を忘れたか肥つた農夫よ 田舍に飢饉は迫り 冬の農家の荒壁は凍つてしまつた。 さうして洋燈のうす暗い廚子のかげで 先祖の死靈がさむしげにふるへてゐる。 このあはれな野獸のやうに ふしぎな宿命の恐怖に憑かれたものども その胃袋は野菜でみたされ くもつた神經に暈がかかる。 冬の寒ざらしの貧しい田舍で 愚鈍な 海牛のやうな農夫よ。

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