新前橋驛

萩原朔太郎

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野に新しき停車場は建てられたり 便所の扉風にふかれ ペンキの匂ひ草いきれの中に強しや。 烈烈たる日かな われこの停車場に來りて口の渇きにたへず いづこに氷を喰まむとして賣る店を見ず ばうばうたる麥の遠きに連なりながれたり。 いかなればわれの望めるものはあらざるか 憂愁の暦は酢え 心はげしき苦痛にたへずして旅に出でんとす。 ああこの古びたる鞄をさげてよろめけども われは瘠犬のごとくして憫れむ人もあらじや。 いま日は構外の野景に高く 農夫らの鋤に蒲公英の莖は刈られ倒されたり。 われひとり寂しき歩廊の上に立てば ああはるかなる所よりして かの海のごとく轟ろき 感情の軋りつつ來るを知れり。

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