腕のある寢臺

萩原朔太郎

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綺麗なびらうどで飾られたひとつの寢臺 ふつくりとしてあつたかい寢臺 ああ あこがれ こがれいくたびか夢にまで見た寢臺 私の求めてゐたただひとつの寢臺 この寢臺の上に寢るときはむつくりとしてあつたかい この寢臺はふたつのびらうどの腕をもつて私を抱く そこにはたのしい愛の言葉がある あらゆる生活のよろこびをもつたその大きな胸の上に 私はすつぽりと疲れたからだを投げかける ああこの寢臺の上にはじめて寢るときの悦びはどんなであらう そのよろこびはだれも知らない祕密のよろこび さかんに強い力をもつてひろがりゆく生命のよろこびだ。 みよ ひとつの魂はその上にすすりなき ひとつの魂はその上に合掌するまでにいたる ああかくのごとき大いなる愛憐の寢臺はどこにあるか それによつて惱めるものは慰められ 求めるものはあたへられ みなその心は子供のやうにすやすやと眠る ああ このひとつの寢臺 あこがれもとめ夢にみるひとつの寢臺 ああこの幻の寢臺はどこにあるか。

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