饗宴

原民喜

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 乾いた星を鏤めて夜空はぴつたりと地上に被さつてゐる。埃まみれの亜鉛屋根は圧潰されたやうになつてゐるので、そのなかにゐる人間も圧潰されたやうな姿で、家の外に出て来る。  家の外につづいてゐるのは昼間の熱のまだ残つてゐる埃だらけの路である。生温かい道路は茫として白く浮上つてゐる。この道路は、疲れきつた人間の魂の秘密のやうに、妖しく、懐しく、そして、もはや何ごとも語らうとしない。疲れきつた人間は暫く立留まつて、埃の路をうち眺め、それからまた狭い家屋に這入つてしまふ。……  雨はもうこの地上を訪れることを忘れたらしく、狭い屋内にも道路にも呼吸苦しさが一様に漲つてゐる。睡れない人間はもはや睡れないことを諦めてゐる。  ところが、ふと、亜鉛屋根に微かな砂を散ずるやうな音が始まる。ためらひ勝ちに落ちてゐたが、やがて沛然と音をたてゝ勢のいゝ雨が訪れる。屋根も、樹木も、道路も、みんなが、みんな泣き出す。雨を抱きついて、おいおいと泣くのである。

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