雅歌

菱山修三

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ひとしきり空に雲はながれる。 そのほしいままなながれ藻の底から、 日はまた深く、 强く、 明るく耀き出す。 うすみどりのしげりかさなる雜 木のあひまあひまに、 -ここにも、 ひかりは澄みながら、 生きるもの の影と息と聲とを招く。 このとき、 花のある木がくれに、 はやあはれに 帶をまきなほす、 その素直なひとの黑髮の上に、 晴ればれと、 いつせい に問ひかける春鳥の聲のかなしさ、 せつなさ。 ······木ははげしく芽吹き ながら、 おのおの、 頑な古い枯れ葉を根元に降らす。 草は草ながら、 ま ばらに耀く靑と沈んだ靑とに色を分ける。 ここに來て、 ふたりして臥し ながら蹈み敷いた草の、 起きかへらずに殘るさまをみよ。 ひととき死ぬ はたやすい、 翔ぶ鳥もみしらぬ彈丸にふいにおちる。 頰擦り寄せ、 息の 根せはしくなげいたひとよ。 はや足どりおもく、 おのれの影を移す草の 上に、 昨年の落葉はうそさむく音を立て、 日のひかりのみはづかしげに、 なんと眼に沁むことよ、 眼に沁むことよ。 木のま木のまに、 あかあかと かがやく日表を、 つと過ぎて、 わななくばかり鳥が啼く。 おのおのその 身のふるさとを失ひ、 言葉なく、 ひたすらに荒い身振りに啼きしきる小 鳥共。 ·····ひとつの息に、 ふとかなしさをものいふひとよ、 その手を手 に、 その肩を肩に、 ふたりして、 眞つ白い花のある木がくれの影の水底 をあかずあゆみゆけ。 やがて夕が來て、 さむざむと、 おもひきはまる日 影をなげかけるまで。

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