早春

菱山修三

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日は低く、 雜草の、 日に透く靑い莖立ちも低く、 -そのあたり、 あは い蔭と日向の入りまじる、 水ともみえない水の上に、 私は身を投げる。 私は次第に沈んでゆく。 私はそこによこたはる。 この水底から、 さむざ むと、 空がみえる。 右ひだり、 耳のほとりに音立てて、 風が吹き過る、 澄み透つた靑さを擾して。 私は眼を閉ぢる。 私のなかに、 傾いた木の影 が倒れて來る、 枯れた木の葉が降つて來る、 ちぎれ雲が、 行人の影が、 さまざまな芝居の背景が、 とりどりの大情小感を書き薙ぐつた文反古が しづけさのなかの、 この涯しないさわがしさ。 私は自分の手を握る、 この血に、 この肉に、 絕えず閉ざされてゐるものの手を。 この日頃、 こ の血の、 この肉の、 -この空の、 この淵の、 -親しさ、 切なさ、 疎 ましさ。 あたたかく、 寒く、 柔らかに、 -見知らぬ人の來て、 危い水 底へ、 私を搬ぶ、 私を搬ぶ、 風の手で、 水の手で。 ああ、 この遙かな道 行。 ······わななきながら、 私は身を起す。 覺め果てたこの眼に、 ただ、 雜草の靑い莖立ちが、 いちめんに寫る。

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