鬼の語
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顏蒼白き若者に
祕める不思議きかばやと
村人數多來れども
彼はさびしく笑ふのみ
前の日村を立出でゝ
仙者が嶽に登りしが
恐怖を抱くものゝごと
山の景色を語らはず
傳へ聞くらく此河の
きはまる所瀧ありて
其れより奧に入るものは
必ず山の祟あり
蝦蟆氣を吹いて立曇る
篠竹原を分け行けば
冷えし掌あらはれて
項に顏に觸るゝとぞ
陽炎高さ二萬尺
黄山赤山黒山の
劍を植ゑたる頂に
祕密の主は宿るなり
盆の一日は暮れはてゝ
淋しき雨と成りにけり
怪しく光りし若者の
眼の色は冴え行きぬ
劉邦未だ若うして
谷路の底に蛇を斬りつ
而うして彼れ漢王の
位をつひに贏ち獲たり
この子も非凡山の氣に
中たりて床に隱れども
禁を守りて愚鈍者に
鬼の語を語らはず
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