安乘の稚兒

伊良子清白

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志摩の果安乘の小村 早手風岩をどよもし 柳道木々を根こじて 虚空飛ぶ斷れの細葉 水底の泥を逆上げ かきにごす海の病 そゝり立つ波の大鋸 過げとこそ船をまつらめ とある家に飯蒸かへり 男もあらず女も出で行きて 稚兒ひとり小籠に坐り ほゝゑみて海に對へり 荒壁の小家一村 反響する心と心 稚兒ひとり恐怖をしらず ほゝゑみて海に對へり いみじくも貴き景色 今もなほ胸にぞ跳る 少くして人と行きたる 志摩のはて安乘の小村

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