はてしなき議論の後(二)

石川啄木

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われらの且つ読み、且つ議論を闘はすこと、 しかしてわれらの眼の輝けること、 五十年前の露西亜の青年に劣らず。 われらは何を為すべきかを議論す。 されど、誰一人、握りしめたる拳に卓をたたきて、 ‘V NAROD !’と叫び出づるものなし。 われらはわれらの求むるものの何なるかを知る、 また、民衆の求むるものの何なるかを知る、 しかして、我等の何を為すべきかを知る。 実に五十年前の露西亜の青年よりも多く知れり。 されど、誰一人、握りしめたる拳に卓をたたきて、 ‘V NAROD !’と叫び出づるものなし。 此処にあつまれる者は皆青年なり、 常に世に新らしきものを作り出だす青年なり。 われらは老人の早く死に、しかしてわれらの遂に勝つべきを知る。 見よ、われらの眼の輝けるを、またその議論の激しきを。 されど、誰一人、握りしめたる拳に卓をたたきて、 ‘V NAROD !’と叫び出づるものなし。 ああ、蝋燭はすでに三度も取りかへられ、 飲料の茶碗には小さき羽虫の死骸浮び、 若き婦人の熱心に変りはなけれど、 その眼には、はてしなき議論の後の疲れあり。 されど、なほ、誰一人、握りしめたる拳に卓をたたきて、 ‘V NAROD !’と叫び出づるものなし。

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