隠沼

石川啄木

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夕影しづかに番の白鷺下り、 槇の葉枯れたる樹下の隠沼にて、 あこがれ歌ふよ。――『その昔、よろこび、そは 朝明、光の揺籃に星と眠り、 悲しみ、汝こそとこしへ此処に朽ちて、 我が喰み啣める泥土と融け沈みぬ。』―― 愛の羽寄り添ひ、青瞳うるむ見れば、 築地の草床、涙を我も垂れつ。 仰げば、夕空さびしき星めざめて、 しぬびの光よ、彩なき夢の如く、 ほそ糸ほのかに水底に鎖ひける。 哀歓かたみの輪廻は猶も堪へめ、 泥土に似る身ぞ。ああさは我が隠沼、 かなしみ喰み去る鳥さへえこそ来めや。

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