獨語

蒲原有明

タグを編集・提案

作品の主題・モチーフなど、対象に固有の情報を登録してください。年代・形式・表記・文学運動などの共通分類は登録できません。会員タグの追加と、正式タグの削除は、5人の支持で自動反映されます。

ログインするとタグの追加・削除を提案できます。

破船の後――南海の孤島 海ぞわが戀、いかなれば おもひかなしき、     海ぞいのち、 見よ浪はあふれ、日こそ照らせ。 うかび來つれば身も船も しぶきのしづく、――     ああわたづみ、 しづくとくだけし船を見ずや。 さだめは土に歸る身も 海に就かまし、     ただねがふは 海に生き滅び、土と朽ちじ。 飮まむか海のさかづきに 恐怖の一夜、     あらしと浪と かげこき雲とに釀める酒を。 ひとたびはわれら口づけし、 されどなほさむ、     幸なの友、 船のみくだけて、なほながらふ。 酌まむかさらば浪熱く とけしほのほを、――     夢ふかかれ、 こゆかれその酒、そのあやしみ。 幸なのともよ、蔭もなき 珊瑚の島ね、――     日こそ燃ゆれ、 井をもとむれども潮湧きぬ。 渇はやまず、うしほのみ、―― ただ海の水、     いかにかせむ、 玳瑁を焚きて潮煮たる。 誰そこの小草くれなゐの 草の實すつる、     ああこの時 などかはおそるる、こを賞でずや。 われこそさらば口づけめ、 なつかしの實や、     知れわが身を、 汝はこれわが夢、わがまぼろし。 なさけはふかき潮より 凝れる漚しも、     島根さんご 紅の實とぞさはやどれる。 死よりもつよき戀とこそ はやく聞きつれ、     海のみなみ かがやき媚ぶるやこの草の實。 かつては清みしわがいのち、 花瓶の水――     花ははやく 世をば萎み去りて、――水は海に。 海ぞわが墓、ここにして 何かなげかむ、     死の盞 戀の實したたり薫ずるをや。 今またさしも寄りそふか おもひのかげよ、――     わが眞白手、 いざこのさかづき飮みほしてむ。 わたづみの戀、海の日や、 照らせあふれよ、     夢ふかかれ、 濃ゆかれこの酒、このあやしみ。 (明治三十六年五月刊)

ログインすると、この作品に自分だけに見えるメモを残せます。

批評・感想 0

作品の表現や構成を検討し、根拠を示しながら評価・講評する場所です。

まだ批評・講評はありません。

獨語の談話

疑問や連想、ちょっとした読み方などを気軽に話せます。

まだ投稿はありません。

話題を投稿する

獨語に寄せられた作品

詩から生まれた翻案・イラストや、朗読・解説などの関連リンクを持ち寄れます。

まだ投稿はありません。

この詩に作品を寄せる