名珠餘影
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短詩飜譯の四くさをここにかかぐ。その一は鬼才ブレエキ作“Sun-Flower”にして、その二は作詩典雅をもてあらはれたるランドル七十五歳生誕日の翌某女友に遣れる述懷の詠なり。その三はダンテ、ロセッティ幽婉の傑作、わが愛誦措かざる“Sudden Light”の一篇、その四はクリスチナ、ロセッティの數多かる抒情の歌のうち“One Sea-Side Grave”と題せるを擇びつるなり。四章もと寸璧のかがやきことに著るしけれど、そのうるほひを傳へむことはむづかし。
一、ああ日ぐるまや
(ブレエキ)
ああひぐるまや、日のあゆみ
ひねもすかぞへ倦みつかれ、
旅ゆくみちのはてといふ
うまし黄金の國を趁ふ。
うらみうせつるますらをも、
雪衣かつぎ逝きし子も
墓よりいでゝたづねよる
國へわれもといのる日ぐるま。
二、述懷
(ランドル)
爭はざりき、爭ふも益なき世や、
めでしは自然、そをおきて藝術のわざ、
雙手命の火にかざしぬくめしかど、
火ぞ沈む、嗚呼何日とてもかしまだたむ。
三、そのかみ
(ロセッティ)
そのかみここにはありけむ、
いつぞ、いかにと語りあへねど、
さながらなりや外の面微草
鋭き美しかをり、
嘆く浪の音、磯めぐる燈火のかげ。
そのかみ君をも知りけむ、
いつの世ぞとはえもわかねども、
燕さすかた頸を君
さはかへすとき、
面帕おちぬ、――そは昔われこそ見つれ。
そのかみかくこそありけめ、
うづまく「時」のすがひゆく間や、
二人が戀はまた身に添ひ、
朽ちまじとさては
夜も日もおなじ歡樂にかへれるやいざ。
四、海邊の墓
(クリスチナ、ロセッティ)
おもひもいでず薔薇さへ、
おもひもいでずうばらさへ、
さても麥刈つかれはて
積みし穗によりねぶるごと、
しかせむわれも黎明まで。
寒きは寒き臘月の――
過ぎしはゆきし日のごとき
その間も一人われをおもふ、
世はみな忘れはつるとも
なほ一人のみわれを憶ふ。
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