歡樂

蒲原有明

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埋もれし去歳の樹果の その種子のせまき夢にも、 いかならむ呼息はかよひて 觸れやすき思ひに寤むる。 さめよ種子、うるほひは充つ、 さやかなる音をば聽かずや、 流れよる命の小川 涓滴のみなもといでぬ。 夢みしは何のあやしみ―― 身はうかぶ光の涯か、 ゆくすゑの梢ぞかなふ 琴のねの調のはえか。 うづもれし殼にはあれど、 なが胸の底にしもまた 歡樂を慕ひつくすと あくがるるあゆみ響くや。 萌えいでてさらば一月 菫草こそ君が友なれ、 生ひたちて、やがてはある夜 眞白百合君に添はまし。

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