枳殼

蒲原有明

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浪を劃りて磯濱に 乾ける沙は誰が置きし へだつればこそ君が家に 枳殼の墻恨みしか 雨緑野に鳴り歇みて 皐月風なく日は蒸しぬ 垣根いといとしめやかに けふ枳殼の花一重 一重に白き花あはれ 一瓣にこもる夢あはれ 身は卑しくて思ひのみ 繁きわれにはなど似たる われや佇む夕まぐれ 嘆くと知れる君ならず もとより門の枳殼の 花をし愛づる君ならず あまりある血をいたづらに 青葉の下に冷さむや 一たび君がにほひある こころの底に染めてこそ

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