さいかし
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落葉林の冬の日に
さいかし一樹、
(さなりさいかし、)
その實は梢いと高く風にかわけり。
落葉林のかなたなる
里の少女は
(さなりさをとめ、)
まなざし清きその姿なよびたりけり。
落葉林のこなたには
風に吹かれて、
(さなりこがらし、)
吹かれて空にさいかしの莢こそさわげ。
さいかしの實の殼は墜ち、
風にうらみぬ、――
(さなりわびしや、)
『命は獨りおちゆきて拾ふすべなし。』
さいかしの實は枝に鳴り、
音もをかしく
(さなりきけかし、)
墜ちたる殼の友の身をともらひ嘆く、――
『嗚呼世に盡きぬ命なく、
朽ちせぬ身なし。』――
(さなりこの世や、)
人に知られでさいかしの實は鳴りにけり。
風おのづから彈きならす
小琴ならねど、
(さなりひそかに、)
枝に縋れる殼の實のおもひかなしや。
わびしく實る殼の種子
この日みだれて、
(さなりすべなく)
音には泣けども調なき愁ひをいかに。
かくて世にまた新なる
光あれども、
(さなり光や、)
われは歎きぬさいかしの古き愁ひを。
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