青い小鳥

北原白秋

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知らぬ男のいふことに、 青い小鳥よ、樫の木づくり、わしの寢床が見馴れたら せめて入日につまされて鳴いておくれよ、籠の鳥、 牛乳が好きなら牛乳飮まそ、 野芹つばなも欲しかろがわしの身體ぢやままならぬ。 何がさみしいカナリヤよ、 ――よしやこの身が赤い血吐いていまに死なうとそなたは他人。 じつと默んだ嘴にケレオソートが沁むかいな。 死んだ娘のいふことに、 青い小鳥よ、擔荷の上のわしの姿が見えぬとて ひとの涙のうしろからちらと鳴くのか、籠の鳥、 弔むそなたの眞實は 金の時計か、襟どめか、惜しい指輪の玉であろ。 何がかなしいカナリヤよ、 ――よしやこの身が解剖をされて墓へかへろとそなたは他人。 やつといまごろ鳴いたとて死んだ肌がなんで知ろ。 わしの從兄弟がいふことに 青い小鳥よ、樫の木づくり、おなじ寢どこに三人まで 死ぬる命の贐に鳴いて暮らすか、籠の鳥、 ケレオソートにや馴染みもしよが、 いつも馴染まぬ人の眼が今ぢやそなたも厭であろ。 何がせはしいカナリヤよ。 ――よしやこの身が冷たくなろと息が締れよとそなたは他人。 死なぬさきから鳴かうとままよ、あとの二日でわしも死ぬ…………

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