青き甕
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青き甕にはよくコレラ患者の死骸を入れたり、これらを幾個となく擔ぎゆきし日のいかに恐ろしかりしよ、七歳の夏なりけむ。
『青甕ぞ。』――街衢に聲す。
大道に人かげ絶えて
早や七日、溝に血も饐え、
惡蟲の羽風の熱さ。
日も眞夏、火の天爛れ、
雲燥りぬ。――大家の店に、
人々は墓なる恐怖。
香くすべ、青う寢そべり、
煙管とる肱もたゆげに、
蛇のごと眼のみ光りぬ。
『青甕ぞ。』――今こそ家族、
『聲す。』『聽け。』『血糊の足音。』
『何もなし。』――やがて寂寞。――
秒ならず、荷擔夫一人、
次に甕、(これこそ死骸、)
また男。――がらす戸透かし
つと映る刹那――眞青に
甕なるが我を睨みぬ。
父なりき。――(父は座にあり。)――
ひとつ眼の呪咀の光。
『青甕ぞ。』――日もこそ青め、
言葉なし。――蛇のとぐろを
香匐ひぬ、苦熱の息吹。
また過ぎぬ、ひひら笑ひぬ。
母なりき。――(母も座にあり。)――
がらす戸の冷たき皺み。
やがてまた一列、――あなや、
我なりき。――青き小甕に、
欷歔りつつ黒き血吐くと。
刹那見ぬ、地獄の恐怖。
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