人生

北原白秋

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野の皐月、空ものどかに、 白き雲ゆるかにわたり、 畑にはからし花咲き、 雲雀また妙にうかびぬ。 南向く白き酒倉、 そがもとにわれはその日も、 幟立つ野の末ながめ ゆめのごとむきし佛手柑。 かすかにも囃子はきこえ、 笛まじり風もにほへど、 父のまたゆるしたまはぬ 歌舞伎見をなにとかすべき。 かくてまたすすり泣きつつ、 實をひとり吸ひもてゆけば 酸ゆかりき。あはれ、それより われ世をば厭ひそめにき。

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