荒浪千鳥
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磯長の小ゆるぎの浜、この浜や荒浪高し。この夜ごろいよいよ高し。時化つづき西風強く、夜は絶えて漁火すら見ね、をりをりに雨さへ走り、稲妻の青の映りに、鍵形の火の枝の棘ひりひりと鋭き光なす。其ただちとどろく巻波。時として雹さへ飛ぶに、なにぞ何ぞ乱るる鳥は。なにぞ何ぞ散り散る鳥は。目に見れば数かぎりなく、声きけば消なば消ぬかに、へうへうと連れ啼く鳥の、百千鳥、荒浪千鳥。荒浪の穂立の空を、とまるすべ、寝るすべ知らに、ただ飛びて散り散る千鳥。此海や涯し知られね、この荒れや測り知られね、初夜過ぎて、また後夜かけて、闇ふかく翼ふる千鳥、この雨を、また稲妻を、ひた濡れて乱るる千鳥。ある声は遠くはぐれて、ある群は千鳥型して、また或るは陸の方向き、また或るはちりちりと散り、すれすれに或るは落ちつつ、波の上驚きて飛び、時に消え、時に明り、いよいよに暗く恐れて、いよいよに青に染まりて、時わかず連れ啼く千鳥、へうへうと凍ゆる千鳥。いつまでか全く迷ふぞ、いつまでか飛びてやまぬぞ。
磯長の小ゆるぎの荒浪千鳥。荒浪の天うつ波の逆まきのとどろきが上、あああはれ、また向き向きに、稲妻の青の脅えに連れ連れ乱る。啼き連れ乱る。
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