冬の棚田
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丘窪の冬の棚田はねもごろにうれしき棚田。寂び寂びて明るき棚田。たまさかに鶸茶の刈田、小豆いろ、温かきいろ、うち湿る珈琲の土。下田にはいくつ稲村白金の笠めき和め、上畑は緑の縞目、わづかにも麦ぞ萠えたる。その畑に動く群禽、つくづくと尾羽根振りては、また空へ飛び立ち翔る。あな冷た群の鶺鴒群れ飛べど目にもとまらず。いづこにか鵯は叫べど、風騒ぐけはひも聴かず。ただ低き日あたりの中、茅屋根の物静かなる、紫に寂び沈みたる、人気なき庭にはあれど、背戸ごとに柿の実も見ゆ。裏丘へのぼる小径は孟宗の林に見えて、その籔の上の日向に蜜柑もぐ人もよく見ゆ。声高にさては語りて燧石切る莨火も見ゆ。珍らかにいとど澄めばか、遠近の枯葉のくぬぎ、草もみぢ、耀く薄、おしなべてかくて安けし。あなあはれ、ここの丘窪、明るけど古さび棚田、うれしけど冬の日棚田、その空に翔る群禽、鶺鴒の薄黄の尾羽のただ波うちて影もとまらず、影もとまらず。
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