地平

北原白秋

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あな哀れ、今日もまた銅の雲をぞ生める。 あな哀れ、明日も亦鈍き血の毒をや吐かむ。 見るからにただ熱し、心は重し。 察るだにいや苦し、愁はおもし。 かの青き国のあこがれ、 つねに見る地平のはてに、 大空の真昼の色と、 連れて弾く緑ひとつら。 その緑琴柱にはして、 弾きなづむ鳩の羽の夢、 幌の星、剣のなげき、 清掻はほのかに薫ゆる。 さては、日の白き恐怖に 静かなる太鼓のとろぎ、 昼領らす神か拊たせる、 ころころとまたゆるやかに。 また絶えず、吐息のつらね かなたより笛してうかび、 こなたより絃して消ゆる、―― ほのかなる夢のおきふし。 しかはあれ、ものなべて圧す 南国の熱病雲ぞ 猥らなる毒の譃言 とどろかに歌かき濁す。 おもふ、いま水に華さき、 野に赤き駒は斃れむ。 うらうへに病ましき現象 今日もまたどよみわづらふ。 あな哀れ、昨の日も銅のなやみかかりき。 あな哀れ、明日もまた鈍き血の濁かからむ。 聴くからにただ熱し、心は重し。 思ふだにいやくるし、愁は重し。 四十年十二月

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