糸車

北原白秋

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糸車、糸車、しづかにふかき手のつむぎ その糸車やはらかにめぐる夕ぞわりなけれ。 金と赤との南瓜のふたつ轉がる板の間に、 「共同醫館」の板の間に、 ひとり坐りし留守番のその媼こそさみしけれ。 耳もきこえず、目も見えず、かくて五月となりぬれば、 微かに匂ふ綿くづのそのほこりこそゆかしけれ。 硝子戸棚に白骨のひとり立てるも珍らかに、 水路のほとり月光の斜に射すもしをらしや。 糸車、糸車、しづかに默す手の紡ぎ、 その物思やはらかにめぐる夕ぞわりなけれ。

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