車上
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春の夜なりき。さくらびと
月の大路へ戸を出でぬ。
燈あかき街の少女らは
車かこめり、
川のふち
霧美くしうそぞろぎぬ。
美き人なりき、花ごろも
かろく被ぎて、――母ぎみの
乳の香も薫ゆり、――薔薇のごと
われをつつみぬ。
ひとあまた、
あとの車もはなやぎぬ。
いづれ、月夜の花ぐるま、
憂き里さりて、野も越えて、
常うるはしき追憶の
國へかゆきし。――
稚子なれば
はやも眠りぬ、その膝に。
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