大寺

北原白秋

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大寺の庫裏のうしろは、 枇杷あまた黄金たわわに、 六月の天いろ洩るる 路次の隅、竿かけわたし 皮交り、襁褓を乾せり。 そのかげに穢き姿して 面子うち、子らはたはぶれ、 裏店の洗流の日かげ、 顔青き野師の女房ら 首いだし、煙草吸ひつつ、 鈍き目に甍あふぎて、 はてもなう罵りかはす。 凋れたるもののにほひは 溝板の臭気まじりに 蒸し暑く、いづこともなく。 赤黒き肉屋の旗は 屋根越に垂れて動かず。 はや十時、街の沈黙を しめやかに沈の香しづみ、 しらじらと日は高まりぬ。 三十九年八月

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