汐首岬

北原白秋

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たうたうと波騒ぐ汐首岬、 鮮やけし、雑草の青、さみどり、   ああ、げに、いにしへのアイヌ・モシリ、   言問へよ、今にして辺の岬岬。 味鳧の浮きなづむ海越え来て、 噴き騰る縦雲の秀をあふげば、   夏よ、げに、声はあり、カムイ・ユカラ、   その声は風と満ち、照り響けり。 朗らかや、すがし葉の大広葉の 蕗の葉の下つ人、コロポックル、   呼べよ、げに、神はあり、オイナ・カムイ、   さながらに立つ影の素の裸男。 ここ過ぎて、神ながら身は新らし、 ここ過ぎて、我が息吹蘇らむ。   人よ、げに、ひたごころ直なる神、   白雲の噴き騰る国思へや。 たうたうと波騒ぐ汐首岬、 鮮やけし、雑草の青、さみどり。   ああ、げに、いにしへのアイヌ・モシリ、   言問へよ、今にして辺の岬岬。 註 アイヌ・モシリ   蝦夷島(アイヌ語)   カムイ・ユカラ   神謡( 同  )   オイナ・カムイ   古伝神( 同  )

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