室内庭園

北原白秋

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晩春の室の内、 暮れなやみ、暮れなやみ、噴水の水はしたたる…… そのもとにあまりりす赤くほのめき、 やはらかにちらぼへるヘリオトロオブ。 わかき日のなまめきのそのほめき静こころなし。 尽きせざる噴水よ……… 黄なる実の熟るる草、奇異の香木、 その空にはるかなる硝子の青み、 外光のそのなごり、鳴ける鶯、 わかき日の薄暮のそのしらべ静こころなし。 いま、黒き天鵝絨の にほひ、ゆめ、その感触………噴水に縺れたゆたひ、 うち湿る革の函、饐ゆる褐色 その空に暮れもかかる空気の吐息…… わかき日のその夢の香の腐蝕静こころなし。 三層の隅か、さは 腐れたる黄金の縁の中、自鳴鐘の刻み…… ものなべて悩ましさ、盲ひし少女の あたたかに匂ふかき感覚のゆめ、 わかき日のその靄に音は響く、静こころなし。 晩春の室の内、 暮れなやみ、暮れなやみ、噴水の水はしたたる…… そのもとにあまりりす赤くほのめき、 甘く、またちらぼひぬ、ヘリオトロオブ。 わかき日は暮るれども夢はなほ静こころなし。 四十一年十二月

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