北原白秋

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煤がふります、菩提樹に、 朝のタオルに、籐椅子に。 煤がふります、庭石に、 桜落葉の霜じみに。 煤がふります、硝子戸に、 燃えてしなへた葉鶏頭に。 煤がふります、雉子馬に、 睫毛擦る子がまろい眼に。 煤がふります、つんとして 妻が物干す鼻のうへ。 煤がふります、パン皿に、 紅茶茶碗に、樽柿に。 煤がふります、巻煙草 のべつまさぐる朱の鉢に。 煤がふります、原稿紙に、 銅銭のやうな赤い煤。 煤がふります、月の夜も、 隕石のやうに、黒い煤。 煤がふります、灯のしたを こほろぎのやうに歩く煤。 煤がふります、脳味噌に、 マグネシユームの燃え滓に。 煤がふります、昼も夜も、 絶えぬお客の黒ソフト。 煤がふります、桃いろの 扁桃腺に、肺の腑に。 ああ、ああ、いやだ。おい、酒だ。 酒にも黒い蠅の煤。 まざあ・ぐうすのお婆さん、 天の煤掃き、それ、頼む。

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