たんぽぽ
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わが友は自刄したり、彼の血に染みたる亡骸はその場所より靜かに釣臺に載せられて、彼の家へかへりぬ。附き添ふもの一兩名、痛ましき夕日のなかにわれらはただたんぽぽの穗の毛を踏みゆきぬ、友、年十九、名は中島鎭夫。
あかき血しほはたんぽぽの
ゆめの逕にしたたるや、
君がかなしき釣臺は
ひとり入日にゆられゆく…………
あかき血しほはたんぽぽの
黄なる蕾を染めてゆく、
君がかなしき傷口に
春のにほひも沁み入らむ…………
あかき血しほはたんぽぽの
晝のつかれに觸れてゆく、
ふはふはと飛ぶたんぽぽの
圓い穗の毛に、そよかぜに…………
あかき血しほはたんぽぽに、
けふの入日もたんぽぽに、
絶えて聲なき釣臺の
かげも、靈もたんぽぽに。
あかき血しほはたんぽぽの
野邊をこまかに顫へゆく。
半ばくづれし、なほ小さき、
おもひおもひのそのゆめに。
あかき血しほはたんぽぽの
かげのしめりにちりてゆく、
君がかなしき傷口に
蟲の鳴く音も消え入らむ…………
あかき血しほはたんぽぽの
けふのなごりにしたたるや、
君がかなしき釣臺は
ひとり入日にゆられゆく…………
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