遠山脈の歌

北原白秋

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 上つ毛の加牟良の北に天そそる妙義荒船、遥ばろと眺めに出れば、この日暮ふりさけ見れば、いや遠し、遠き山脈、いや高し高き山脈、いやが上に空に続きて、いや寒く襞を重ねて、幾重ね、幾畳り、末遂に雲居にぞ入る。かりそめの旅にはあれど、夕されば内にも堪へず、外に出でてひとりありけり。向ひ吹く川の瀬の風、川風の吹きの凍えに我が向ひ辿る高崖、遥か見る北の山脈。冬も早や絹のつや雲、巻雲の巻きのなびきに、氷凝り雲層雲の群、重ね雲、寂び金の雲、下明り雲ともわかず、薄ぎらひ山ともわかず、たださへも現ならぬを、たださへも果てしわかぬを、日の射すか末広の虹幾すぢか透きて落せり。かうがうしその薄光、寂び寂びしプラチナのすぢ、濃き淡き峰の畳みに、引きちがふ山の小襞に、また雨と和み注げり、柔かき金色の霧。あな遠し遠き山脈、あな高し高き山脈、立ちとまり見れども消えず、目ふたぎて傷めど尽きず、目翳げして遥けみ見れば、いや寂し薄き陽の虹、また見ればさらに彼方に、いや高き連山の雪、いや遠き連山の雪、ひえびえと、つぎつぎと、続きつづきて耀きいでぬ。

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