夢の奥

北原白秋

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ほのかにもやはらかきにほひの園生。 あはれ、そのゆめの奥。日と夜のあはひ。 薄あかる空の色ひそかに顫ひ 暮れもゆくそのしばし、声なく立てる 真白なる大理石の男の像、 微妙じくもまた貴に瞑目りながら 清らなる面の色かすかにゆめむ。 ものなべてさは妙に女の眼ざし あはれそが夢ふかき空色しつつ、 にほやかになやましの思はうるむ。 そがなかに埋もれたる素馨のなげき、 蒸し甘き沈丁のあるは刺せども なにほどの香の痛み身にしおぼえむ。 わかうどは声もなし、清く、かなしく。 薄暮にせきもあへぬ女の吐息 あはれその愁如し、しぶく噴水 そことなう節ゆるうゆらゆるなべに、 いつしかとほのめきぬ月の光も。 その空に、その苑に、ほのの青みに 静かなる欷歔泣きもいでつつ、 いづくにか、さまだるる愛慕のなげき。 やはらかきほの熱る女の足音 あはれそのほめき如し、燃えも生れゆく ゆめにほふ心音のうつつなきかな。 大理石の身の白み、面もほのかに、 ひらきゆくその眼ざし、なかば閉ぢつつ、 ゆめのごと空仰ぎ、いまぞ見惚るる。 色わかき夜の星、うるむ紅。 四十一年七月

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