雙蝶のわかれ

北村透谷

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ひとつの枝に雙つの蝶、 羽を收めてやすらへり。 露の重荷に下垂るゝ、   草は思ひに沈むめり。 秋の無情に身を責むる、   花は愁ひに色褪めぬ。 言はず語らぬ蝶ふたつ、 齊しく起ちて舞ひ行けり。 うしろを見れば野は寂し、   前に向へば風冷し。 過ぎにし春は夢なれど、   迷ひ行衛は何處ぞや。 同じ恨みの蝶ふたつ、 重げに見ゆる四の翼。 雙び飛びてもひえわたる、   秋のつるぎの怖ろしや。 雄も雌も共にたゆたひて、   もと來し方へ悄れ行く。 もとの一枝をまたの宿、 暫しと憇ふ蝶ふたつ。 夕告げわたる鐘の音に、   おどろきて立つ蝶ふたつ。 こたびは別れて西ひがし、   振りかへりつゝ去りにけり。

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