あれ飛行機よ

小徳喜有次

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向へのおばさん こんにちは! 今日もいゝお天氣でございます 十一月もなかばいつたに 世の中はまだ靑々として 松葉のかがやぐ梢をゆすぶり ちゆんちゆんと雀子がうたつてゐるネ だけど、 向へのおばさん こんにちば はるなつあきゆきふゆなのに あなたも わたしも 二階の窓から 萎ひたひまわりの顏をつきだし 「こんにちは」 「おはやうさん」 よのなかでいちばんたいくつな人は だ-れ ととわれたら、 やつぱしおばさん、 あなたとわたしであるやうだ たいくつの髪の毛に埃がたまつて おばさん 今日はいちんち髮のせんたく かびついて靑くさいペンをにぎつて 私の書くものはゆめものがたり! おばさん、 けふはあんたは琵琶ですか 菎蒻の舌のやうにうたひだされる あはのじふろべエ! あはれや このいいお天氣に 私はみみずのやうに涙が出て きいろいキザミを砥めてをります おもへばうらわかい少年の日に 血氣にはやりし このみづみづしいペンなりしが めぐまれないたべものの病葉に あの つややかな蕾は朽ちてしまひ がつがつにペンは鏽びてゐる······ (友がみな、 われよりねらくみゆる日よ 花を買ひ來て妻としたしむ!) だが、 その妻女とてない私。 創造しい花とてない私。 たいくつの 鬱ぼけた二階のすみで みみずよりも づるづるとキザミをくすべる 向へのおばさん こんにちは! 今日もいい天氣で、 (蛙みたいに靑穹を覗いて) 「なんとまあ 晴れやかなお天氣ネ」 あれ、 あれ、 まあ あたし うれしいわ あれを ごらん なさいナ! ぶん ぶん ぶん ぶん あれは飛行機のぷろぺらだよ をう、 蝴蝶の羽根のやうに 靑やかな穹たかく翔んでゐるネ 一粒五 おばさん!) あの蝴蝶のつばさを、 はるばるながめ せめてもの、 こころなぐさみにしやうよ

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