乖離

高祖保

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一  十月。秋神の即位。――金鶯一羽、廃園のエルムの樹に通ひはじめる。 二  道傍の亜灌木にある、水禽の糞。  湖からあがる風が、弧を描いて、水霜の葉におちる。  青い鶫が食卓にのぼりだすと、聖餐式のやうに澄んだ夜ごとが、展ける… 三  手帖に一篇⦅天使園の薔薇⦆といふ詩を、書きとつた。それから、パピィニの自叙伝を読んだ。そして、ひとりで眠つた。 「灰色の靴下を穿いた秋」が、わたしの精神の罅裂の隙き間から、潜りこんでくる。 四  霊感の屯。――たましひの寨。 五  福音書的とは、何といふことであらう。  海扇貝にみえる、支那団扇。  かれが年老いたアナクレオンのやうに、雨にうたれながら詩を吐き出す、――吐き出すことそれは、一向エヴァンヂェリックではない。 六 ⦅弗羅曼⦆とよばれる、割烹店の中二階。孔雀草の群落。  わたしは水馬歯を刻んで、それへ該里の酒を滴らせる。秋ばかりは、金いろの時間が、燠のやうに燻つて。…

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