ハンニバル雪のアルプ越

槇村浩

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(一)嗚呼英雄やハンニバル  にくさはにくしローマ国  未だ十歳の少年が  ローマを討てと叫びたり (二)あたりは暗き森の中  神を拝してひざまづき  必ずローマ討たなんと  誓は立てぬおごそかに (三)此所はアルプの山の果  折しも起る雪なだれ  打たれて倒る三四人  「アッ」と一声谷そこへ (四)千刃の谷見下ろせば  深さは深し雪の雲  今落ち行きし兵士等の  あとも止めぬ大吹雪 (五)うえと雪とに戦ひて  艱難辛苦ハンニバル  積雪高き山の上  兵士の姿物凄し (六)夕日の沈む彼方より  「ワッ」と攻めくる土人兵  修羅の巷に血は雪を  唐紅に染めてけり (七)千辛万苦重ねつゝ  絶ゆまず進むハンニバル  永へに止まぬ山の雪  降りつゝ歌ふ彼がいさほ (八)高く聳ゆるアルプ山  上にかゝれる夜半の月  英雄の功たゝふ如  雪はつもりて月はすむ (大正十二・三・一一)

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