過去情炎

宮沢賢治

タグを編集・提案

作品の主題・モチーフなど、対象に固有の情報を登録してください。年代・形式・表記・文学運動などの共通分類は登録できません。会員タグの追加と、正式タグの削除は、5人の支持で自動反映されます。

ログインするとタグの追加・削除を提案できます。

截られた根から青じろい樹液がにじみ あたらしい腐植のにほひを嗅ぎながら きらびやかな雨あがりの中にはたらけば わたくしは移住の清教徒です 雲はぐらぐらゆれて馳けるし 梨の葉にはいちいち精巧な葉脈があつて 短果枝には雫がレンズになり そらや木やすべての景象ををさめてゐる わたくしがここを環に掘つてしまふあひだ その雫が落ちないことをねがふ なぜならいまこのちひさなアカシヤをとつたあとで わたくしは鄭重にかがんでそれに唇をあてる えりをりのシヤツやぼろぼろの上着をきて 企らむやうに肩をはりながら そつちをぬすみみてゐれば ひじやうな悪漢にもみえようが わたくしはゆるされるとおもふ なにもかもみんなたよりなく なにもかもみんなあてにならない これらげんしやうのせかいのなかで そのたよりない性質が こんなきれいな露になつたり いぢけたちひさなまゆみの木を 紅からやさしい月光いろまで 豪奢な織物に染めたりする そんならもうアカシヤの木もほりとられたし いまはまんぞくしてたうぐはをおき わたくしは待つてゐたこひびとにあふやうに 鷹揚にわらつてその木のしたへゆくのだけれども それはひとつの情炎だ もう水いろの過去になつてゐる (一九二三、一〇、一五)

ログインすると、この作品に自分だけに見えるメモを残せます。

批評・感想 0

作品から読み取ったことや、自分の中に生まれた感覚をまとまった文章で残す場所です。

まだ解釈・感想はありません。

過去情炎の談話

疑問や連想、ちょっとした読み方などを気軽に話せます。

まだ投稿はありません。

話題を投稿する

過去情炎に寄せられた作品

詩から生まれた翻案・イラストや、朗読・解説などの関連リンクを持ち寄れます。

まだ投稿はありません。

この詩に作品を寄せる